ふるいトモダチ

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ちょっとした用事のために外出して家にもどる途中で10年来の旧友にばったり出会った。音楽学校時代のともだちで、以前は京都に住んでいたので時間があればよく遊んでいた。名前はK君としておく。

K君はボーカル科の生徒でぼくはギター科で学んでいたんだけど、なぜか一緒にいると、ぼくはボーカルをして彼がギターを弾いていた。音楽で仕事がしたい!とおもっていたときに一番はじめに仕事らしい、他人から頼まれる演奏したのも彼と一緒だった。

「なんか演奏してくれって頼まれたから一緒にやらへん?」といわれて、どうやらギャランティーも発生するらしいということでその仕事を受けた。彼の知人が、夏のお祭りかなにかで演奏してくれる人を探しているとかいう話だったとおもう。

当日、公園みたいなところで、ぼくが歌い、彼がギターを弾いて、なにを演奏したのか忘れたけど、とにかく数曲やった。たぶん30分とか45分とかだったとおもう。そして演奏が終わり、主催者に呼ばれて、さてギャラがもらえるかなーと期待していたら、「おつかれさん、今日はありがとうね、これよかったら」と封筒かなにかをもらった。

「初ギャラだ」と自分の音楽がギャラに変る瞬間にドキドキした。
そして中をあけて出てきたのは、やきそば券2枚だった。

いや、本当の話。これはふたりのあいだで笑い話としてずっと語り続けられるだろう。あれからお互いいろんな経験をした。話していても思い出話にことかかない。でも、思い出だけでなく、これからもずっと音楽の話ができるようにひとつひとつやっていこう。

よくおもうのだけど、友情とか愛情をあたためる魔法瓶のようなものをもっている。「好き」とか「あいつおもしろいな」と一度おもったらなかなかその感情はさめることがない。どれだけ離れていてもどれだけ連絡してなくても、ときどき思い出して「あいつ元気にしているかなー」とあたたかい気持ちになる。

なにかの事情とか、そうしたほうがいいだろうとおもって距離を置くこともあるものの、いちど魔法瓶にいれた感情はずっとそこに残っているみたい。みんなそうなんだろうとおもっていたのだけど、これは人によるのかもと最近疑問におもっている。ずっと会っていないと不安におもってしまう人、あまり会わなくても不安におもわない人の2タイプいるらしい。まあ、考えてもしかたないから、「そういうものなんだ」ですませてしまおう。