イノダコーヒーで豆を買う

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コーヒーが飲みたくなった。不思議なことに京都にはおいしいコーヒー屋さんがたくさんある。小川珈琲、六曜社、スマート珈琲、そしてイノダコーヒー。今回おとずれたのは何度となく店のまえをとおっていたけどはいったことがなかったイノダコーヒー。

店内にはいるとまず禁煙か喫煙かきかれる。ふだんなら迷わず禁煙席をえらぶんだけど、喫煙席をえらぶとイノダコーヒーの隠れ名物である庭園がみれるらしいのでそちらへ。何歩かあるいて、席につこうとおもうけどちょっととまどう。テーブルが円形なのだ。コーヒーをいれてくれる係りの人とコーヒーをいれる食器やお湯をわかすコンロなどを中心にして、それを囲むようにテーブルが配置されている。そそれはまるでバームクーヘンのよう。中心の空洞の部分に店員、食べれる部分がテーブルという形。そのまま立っているわけにもいかないので、適当な席をえらんで座る。

40後半くらいの男性と30代後半あたりの女性が中心の部分に立っていて、女性のほうがオーダーをとりにくる。といっても常にほとんど目の前にいるといっていいほどの距離にいるので内心ちょっと落ち着かない。まあ、とにかく飲んだことがない銘柄を注文する。そうすると女性の店員が男性にむかってというより、その空間全体に聞かせているかのようにオーダーをとおす。

男性はコンロの一番奥にあるお湯をためた鍋のようなものにコーヒーカップをいれる。カップをあたためると同時にどんなオーダーがはいったのか確認する機能になるんだろう。今度はその鍋のひとつ手前にある琺瑯でできた白色のケトルをもちあげて、さらに手前にある銀色のドリップポットにお湯をうつす。けっこう高い位置からお湯をそそぐので、空気にふれさせて温度をさげようとしているのかなとおもう。

男性はつぎに円錐の形をしたドリッパーにフィルター紙をセットし、缶にはいったあらかじめ挽いてあるコーヒー豆を軽量スプーンではかってそこにいれる。その豆にむかって数滴お湯をたらし、しばらくおいてから、ふたたびお湯を注いでいく。そしてできたコーヒーを、今度は女性がこちらにもってくる。コーヒーをいれるために配置されたシステムと流れるようなよどみのない作業がきれい。

コーヒーはとても濃い味がした。豆の銘柄がたまたま好みなのかなんなのか知らないけれど、かなりおいしいかったので豆を買って帰ってきた。そういや、庭園をみるのをすっかり忘れていた。でも、あの店員さんのコーヒーをいれるのをまた見たいので、今度も喫煙席に座るかもしれない。

それにしても、コーヒーを一杯いれるという作業もつきつめると哲学をもちだすのだろうか。お湯を沸かすためのケトル。ドリップするポット。お湯の注ぎかた。バームクーヘン型のテーブル配置、すべてがおいしいコーヒーのためにデザインされているようだった。