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現金、カード、クリップ(銀色、鉄製、4cm×6cm)

阪急梅田駅の改札を通ろうとICOCAが挟んであるマネークリップをかざすとうまく感知しない。再びカードだけにしてみると今度はゲートが開いてくれた。そしてマネークリップを左ポケットにいれて22時30分の快速急行河原町行きにのった。

京都に向かって前から2両目の長椅子にすわった。車内はそこそこ混雑していて、僕がかけている長椅子に7名。その対面の椅子にも7名すわっていた。なぜ具体的な人数をおぼえているかというと、自分と両隣の人の間にすこしだけ隙間があったので、これは詰めたらもう一人すわれるじゃないだろうか?と疑問におもい座席の定員数を確認したから。

車内では借りてきた本を読もうとしたけれど、睡魔が襲ってきて、意識がとぎれとぎれになる。おかげで同じページを何度も読むことになった。あきらめて、本を鞄の中にいれて本格的に眠る。どれくらい眠っただろうか、たぶん30分くらい。気づくと右隣にすわった 髪の長い重ね着をしたかわいい女の子ががっつりと僕の右肩によりかかって寝ていた。「ちょっと寄りかかり過ぎじゃありませんか?」とおもうも、こちらも眠いのでまたさらに眠る。結局その女の子は桂駅でおりていった。

ふただび本を読もうととりだして、ページをめくるけれど、さっきどこまで読んだのかわからない。印のための紐が挟んでいあるところから読んでみたけれど、そこからではない。適当にページを進めて読んでみたけれど、そこも既に読み終わったところ。そうこうしているうちに降りる予定の大宮駅についた。23時15分ごろ。

扉があいてフォームに降りた。左ポケットにいつもいれているICOCAと現金をはさんだマネークリップを取り出そうとする。しかし見当たらない。あれ?おかしいな。右ポケットにいれたんだろうか?とおもい探ってみるもののない。後ろポケット?と探る、ない。鞄の中と探る、ない。

さまざまな可能性が頭の中を交錯する。マネークリップを落とした。梅田を歩いているとき?いや改札を通ったんだからそれまでは持っていたはず。するとその後になくした。改札を通ってから電車に乗るまでの間?座席に座ってから座席の上に?それともあの右肩にがっつり寄りかかってきた人が気をひくためのトラップで左の人がスリ?それとも駅を降りてから?

財布をなくした旨を駅員さんに伝える。迅速に各駅に連絡をいれてくれたけれど見つからない。後日連絡する場所を教えてもらい、駅をあとにする。交番にはいって紛失届を書く。お巡りさんはすごくなめた口調で対応してきたので、こちらはそんな口調で対応するなという態度で対応する。

もうでてこないだろうなとおもいながら駅からの道をひとり歩く。その時冗談とか強がりとか強制的肯定思考ではなく、自然と、なんか強運になった気がする、とおもった。浜辺を歩いていて、打ち寄せる大きな波を見て、海風を肌に受けるように、自分の運気や運勢がすこし変わるのを感じた。もちろんそんなものが存在すればの話。あるかどうかしらないけれど、そう感じたことは事実。

家に帰ってきて、クレジット会社に電話する。すごく事務的で人情味がない。まさに案件を"処理される"という表現がぴったり。しかし人情的に対応してくれるけれど、全然仕事ができない人よりは3倍くらいマシだよねこの場合、とかおもうと、ひとり笑いそうになる。「そうなんですか、それは大変でしたね、ああカードを停止したい、わかりますそのお気持ち、不安でしょうね、上限まで使い込まれたら大変ですものね。停止の手続きは、ええっと、どうやるんでしたか、す、すこしお待ちくださいませ、、、」などとデキナイ窓口係と対比させてみる。


というわけで、なくしものをした。落としたのか盗られたのかわからない。しかし精神的な揺さぶりは全く受けていない。もちろん金銭的なダメージはそれなりに受けた。なんだかいろんなことに動じなくなってきている気がする。



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