朝食のバイキングのようなもの

2006年05月13日23:41


世の中にはいろんな本があるけど、
そのなかでもとびきり面白いのは自伝だと思う。

自伝の内容が、自分が好きなアーティストの場合なおさらだ。


自伝を面白いと感じる理由がいくつかある。


第一に、あるアーティスト(もしくは、何かをした人)が
どんな環境におかれ、そのときどんなことを考え、作品を作ったのか
という背景を知ることができるのが興味深い。


第二に、その人の逸話をつうじて、その周りにいた人たちのことを
知ることができるのもいい。

たとえば、マイルスの話を読んでいて、バードのことを知ったり、
チェット・ベイカーのことを読んでいてジェリーマリガンとスタン・ゲッツの
ことを知ったり。

芋づる式に逸話が広がっていくので、今まで平面的にしっていた話が
立体的になっていったりするし、ええ?そうだったのという驚きもある。


第三に、相対的に自分の生き方を考えることができる。

価値観というのは、すごく曖昧なもので、いま正しいとされている風潮が
10年先も正しいとされるとは限らない。

70年前にタブーだったこと、恥ずるべき行為だったことが、
いまなら普通に行われているということは、すごく良くあることだと思う。


世間一般の常識的なものと、自分の価値観を混ぜ合わせ
自分の生き方を決めているわけなんだろうけど、それがどんなものなのか
選択している本人にも良く分かっていないことが多いと思う。

簡単にいうなら、ある対象に近づきすぎていて、全体が良く見えないという
ことでしょうか。近視的というかなんというか。

顕微鏡でミカンの皮をみたら、それがミカンなのかどうかもわからない
みたいな感じ?


 話が逸れたので、本題に戻ります。


乱暴な言い方をしていしまうと、価値観って自分だけで考えているだけでは
よくわからないとおもう。

なにか、比べるべき対象があって、初めて自分の位置がつかめるというか
なんというか。上手く説明できない、ごめんなさい。

(うーん、
明るいということを知るには暗いという存在がないとダメみたいな
話なんだけど、分かりづらいなー)

まあ、とりあえず、他人の人生を見ていると、自分の人生もよく見えてくる
ということでしょうか。


そんなこと考えながら読んでいるわけじゃないんだけど、
自然にそういうのって、じわじわと比較対象として自分の中に
しみこんでくる気がする。


なんか、暮らしていくと、
色んなものが道におちているような気がするんですよ


悲しみ・興奮・安らぎ・お金・仕事・友情・暖かさ・愛情・裏切り
失敗・成功・つながり・思い出・夢・楽しみ・別れ・出会い・


なんつーか、趣味のいいホテルでとる朝食のバイキングのように
多種多様な人生の構成要素みたいなのが沢山ならんでいる感じ。


で、なにがいいたいかというと、その多種多様な料理のうち
どれを大切にして食べましょうか?

ということだと思う。


好きなだけ、望むもの全部を食べたいところだけど、
ある一定量を過ぎると、お腹がいっぱいになってしまうし

これは旨い!と思って望んだものが、実は胸焼けを起す原因だったり
徐々に健康を蝕むものだったり
(やりたいと思ってやったことが実は全然やりたくないことを含んでいたり)


自伝を読むというのは、そのバイキングに行って
隣に座った、すでに食事を終えた人に話しかけ、
その料理の感想をきくということに似ているのかもしれないです。


まあ、感想を聞いたところで、食べたいものは食べるだろうし
犯してしまう過ちは、分かっていても犯してしまうんだろうけど。


ちなみに、ペニンシュラで食べたクロワッサンはとてもおいしかったです。