とびきりいい女
- 2006年11月18日16:15
すこし前に飛びきりいい女をみかけた。
その朝ぼくはめずらしく通勤時の阪急電車にのっていた。
前の晩、友人の家に遊びにいき、遅くなったので泊めてもらった。
ぼくは友人宅から家に帰っているところだった。
その飛びきりいい女は、ほんとうにいい女だった。
まるでどこかのファッションショーから抜け出てきたようなかんじ。
身長は175cmより高く、細身だけど痩せすぎていなくて、
ファッションもグレーの長めのコートに黒のニット、黒のヒールという
どちらかといえばかっこいい部類にはいるいでたち。
おおきめのサングラスをかけて、自信にみちた表情をうかべている。
僕は心の中で「おお、すげーな」とおもっていた。「気合入ってんな」。
「あなたのような女性のまえだと、
どんなこと話していいか全然わからなくなっちゃうんです。
なにを話しても馬鹿になったような気がして。」
と言ってみたかったけど、もちろんそんなことはいわなかった。
しばらくすると、ぼくのなかに、
いい女は、なぜいい女でいれるのか、という疑問がうまれた。
いい女はいかにして、いい女になるのか? といいかえてもいい。
確かに彼女は、背も高いし、顔も、よく見えないけど、美人だとおもう。
でもその先天的要因が彼女を飛びきりいい女にしているわけではない。
それなら、ふつうのいい女であるはずで、飛びきりとまではいかない。
では、ふつうのいい女を、飛びきりにしいている要因はなんなのだ。
たぶん彼女は外見にかなり気をつかっているはずだ。
鏡をみずに電車に乗ることもないだろうし、
お化粧せずに会社に行くことも普通はないだろう。
そういう自意識の高さがさまざまな行動をよんでいるのだろう。
自分のことをよく見せたいという意識。
ある水準以下の自分を許さないという意識。
だから、彼女は服を買うのが好きなのだろうし、
自分に似合うものを知っているし、化粧をするのが好きだし、
食事にも気を使うし、健康的であろうと夜9時くらいに寝ているかもしれないし、寝る前はストレッチをしてから寝ているかもしれないし、
美容関係の情報に敏感で最近の趣味はヨガかなにかかもしれない。
とにかく、自信がもてる自分でありたい、よりよい自分でいたいという
意識が、彼女を飛びきりいい女にしているのだろうとおもった。
でね、そんな風に考えていたら、また疑問がわいてきたんです。
あのさ、その意識の高い彼女は、普段どんな生活をしてるんだろう?
ってこと。
意識が高いから、いい女、きれいな女でいられるっていうのは
わかるんだけど、それって結構努力がいるし、大変なことだと思うわけ。
たとえばさ、家に帰ってきて、部屋着に着替えて、メイクも落として
ご飯を作っているとするじゃない。
で、まあ、カレーを作っていてカレー粉買い忘れた。
別のたとえなら、鍋しようと思ってたんだけど、ポン酢がないとか。
いろいろなケースがあるとおもうんだけど、
ようは不意に外出しなくてはならない。こんなことってあるよね。
こんなとき彼女はどうするんだろう?
また一からメイクをするのだろうか?
いや、そんなの面倒くさいからすっぴんで外出?
違うわ、そんなの私の自意識が許さないのよ、おばかさん。
休日に家でくつろいでいて、べつに外に行く予定もない。
今日はお家でゆっくりしたい。でもちょっとだけ外出する用事ができた。
さて、こんなとき私はどこまで綺麗にすればいいの?
いつものように自分が完璧だとおもうレベルまで着飾ればいいのかしら?
それとも、誰にも会わないだろうから、手を抜いてもOK?
いやいや、油断大敵、一事が万事、私に手抜きなんて言葉はなくってよ。
さて、どうしようかしら。
もっと話を進めてみると、その飛びきりの容姿にひかれた
ある男性と彼女が付き合うことになりました。
ああこの人私のこと好きっていってくれるけど、すっぴんいつ見せよう?
いつ自分の着飾っていない姿をみせればいいの?
なんていう風にさ、その自意識が高ければ高いほど、
素の自分をみせることに抵抗感がうまれるのではないだろうか?
そんなことを考えると、女性って男性にくらべて、
そういう外見へのこだわりというか意識が平均的に高いんだとおもう。
女性がどんな気持ちで、すっぴんをみせるのか、自分の素の部分を
みせていくのか、なんて考えたことはなかったけど、
そこには男には理解できない葛藤があるような気がする。
気のせいかもしれないけど。